クリスマスのたのしみのひとつ、”ジンジャーハウス”。今年も、各クラスに飾られ、子どもたちは「かわいいおうちだね」「おいしそうだな…」と見つめています。
ジンジャーハウスは、飾ってたのしむだけでなく、最後は食べてたのしめる”おかしのおうち”です。
そして、そのひとつひとつが、園のお給食さんたちの手作り!
一体どのようにして作られているのでしょうか?今回、お給食さんに完成するまでの工程、また、園長先生の想いや、金型との運命的な出会いを教えていただきましたので、紹介したいと思います。
”いいにおい”に誘われて…運命の出会い
ジンジャーハウスを作るには上の写真の様な「金型(かながた)」が必要となります。この金型は園長先生が入手してきたものなのですが、実はこんな逸話があります。以下は、園長先生から聞いたお話です。
40年前の事です。ヨーロッパやアメリカなどの家庭では、昔からクリスマスの楽しみの一つに、ジンジャーハウス(クッキー)を焼き上げ、家の中に飾り、クリスマスを豊かに、家族みんなで楽しみながら待ち望んでいたことを知った先生は、「ジンジャーハウスが保育園にあったらどんなに子どもたちが喜んでくれるだろう。よし、探すぞ!」と思いました。
ジンジャーハウスを作るためには、まず、焼くための金型が必要だという事で、下田や三島、沼津の色々なお店を聞いてまわりました。しかし、その金型を見つけることはできませんでした。「よし、それならヨーロッパに行った時に買ってこよう」と思いましたが、何年か経つうちに、そのことを忘れかけていました。
ある年の12月。子どもたちへのいいクリスマスプレゼントはないかなと、東京・中野の商店街をキョロキョロしながら歩いると、どこからかクッキーのいい匂いが流れてきました。
「あぁ、いいにおいだなぁ…」
先生は、その匂いの方、匂いの方へと歩いて行きました。
「このお店からだな」と、そのお店のショーウィンドウを覗くと…
先生の目に飛び込んできたのは、ジンジャーハウス。「いいにおい」の正体は、「ジンジャーハウスのにおい」だったのです!
嬉しくて嬉しくて、店の前で大喜びをしている先生に気が付いたお店の主人が、「どうぞ、お入りください、いいにおいでしょう?」と、お店の中へ入れてくれました。
店に入ると、さらに驚くことが起こりました。
あの欲しくて欲しくて探し求めていた金型が目の前にあったのです!
先生は、もちろん、すぐにそれを買いました。
”おかしのおうち”が
できるまで
念願の金型を手に入れ、早速ジンジャーハウスづくりに挑戦!でも…
以下は園長先生の話の続きです。
喜び勇んで帰ってきた先生は、早速、お給食さん達とジンジャーハウスづくりに取り掛かかりました。
初めてのジンジャーハウスづくりは、かなり苦戦しました。金型を使ったクッキーは、焼き上がり直後は良いのですが、冷めていくうちにとキュウっと反りあがってしまい、くっつけることができませんでした。また、砂糖を使ったアイシングは時間がたっても固まりませんでした。
そこで、色々なお菓子屋さんに電話をかけ、たくさんのアドバイスをいただき、助けてもらいながら進めていきました。
最初はかなり苦労したようです。しかし、色々な人の協力や工夫・努力で、現在のような形にできるようになったのですね。
”地面”ください!?
ジンジャーハウスはクリスマスシーズンは飾っておき、クリスマスの後、焼き直してみんなで食べます。そのため、本体となるクッキーは、「日持ちが良くて、膨らまず、おいしい」ものになるように配合を考えました。
家と木の部分は卵少なめ、砂糖多めにして、日持ちするようにします。ジンジャーハウスは、その名のとおり、ジンジャー(生姜)を入れるのですが、子どもたちが食べやすいように、ジンジャーは入れません。
そして、土台(地面)には、保育園の農園で子どもたちと収穫し、農協でひいてもらった「地粉」を使います。この地粉を使った土台は、豊かな香りと味があり、食べるととてもおいしいです。子どもたちにも大人気で「地面ください!」とおかわりの長い列ができます。
6月ごろの麦刈りの様子
子どもたちが収穫した小麦からできた「地粉」
土台の部分に使います
型に詰め、焼きます
まず、型にサラダ油をたっぷり塗って、生地を詰めます。家の部分は、厚く詰めると組み立ての時に歪んでしまうので、できるだけ薄く詰めます。木の部分はいっぱい詰めたり、少なめにしたりして、「大きい木」「小さい木」を表現します。
オーブンで焼きます。1回の焼き時間は25分。2回焼くと一軒分のクッキーが焼きあがります。
アイシングで装飾、そして一軒一軒、丁寧に組み立て
焼きあがったら、すばやく平らな場所に置き、反りを防ぎます。
クッキーが冷めて固くなったら、アイシング(白い部分がそうです)で「窓」や「ドア」の装飾をしていきます。そして、接着面を平らに削り、バリとりもします。
次はいよいよ組み立てです。できあがった各パーツをアイシングを接着剤として組み立てていきます。
見事!”家”になりました!次はこの家を土台(地面)にくっつけます。
おかしのおうちを「建てる」
土台の部分はでこぼこしているので、隙間ができないよう、彫刻刀で接着する所を削ります。「木」や「人」が立つ部分も同様に削ります。削り終えたらハケできれいにします。そして、アイシングで接着していきます。
自由にレイアウトしていきます。↑子どもたちが集まってきて、楽しそうに遊んでいるでしょう?^^
雪の女王の魔法!?ジンジャーハウスが雪景色に!
降り積もった雪を表現するために、アイシングで飾ります。
アイシングが乾いたら仕上げに粉砂糖を振りかけます。人には”雪”がかからない様にホイルをかぶせておきます。
雪の女王降臨!?どんどん雪景色に変わっていきます!
そして…
すてきな”おかしのおうち”のできあがり!! 完成です!!
最後に、園長先生の言葉を紹介したいと思います。
雪の積もった屋根。その中で遊ぶ子ども。初めて上手にできたときは“やったー”と皆で喜びました。
子どもたちの前にジンジャーハウスが置かれると、すぐにみんな集まってきて、
「いいにおい…」「おいしそう!」「いいなぁ」
子どもたちがみんな帰った後、ジンジャーハウスを見てみると、色々なところに子どもたちの指の跡が残っていました。その姿は先生に「よかったね」と、微笑んでいるようでした。
それから40年…今年もお給食さんたちはジンジャーハウスを焼き上げて皆の前に飾りました。
「感謝、感謝」
先生の思いは、こうして今年も子どもたちへ届きました。
他にも”おたのしみ”が!
楽しいクリスマスシーズンには、ジンジャーハウスだけでなく、他にも”おたのしみ”をお給食さんたちは作ってくれています。
【いちごのショートケーキ】
先日あった12月のお誕生日会の時、おやつにでました!スポンジからクリーム、デコレーションまでお給食さんの手作りです。とってもおいしいです!
【オーナメントクッキー】
ツリーや園に飾るクッキーです。もちろん、クリスマス後にはみんなでいただきます!
もちろん、ひとつひとつ手作りです!
園やツリーなど、色々な所に飾ります。
子どもたちのため、心を込めて、ひとつひとつ丁寧に作ってくれています。また、この記事で紹介したように、様々な想いも込められています。送迎の際など、是非、じっくりご覧ください。
※ジンジャーハウスを飾る時には透明なビニールをかけています。